マンホールの中に?!

BATTLE2
 マンホールの中に?!



「・・・・・・・・・・? あれ? 誰かいるみたい・・・?」
「おい、どうした?」





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   ここはとある港町。
  巻物と8つのオーブを求めて旅立ったあたしたちは、あてもなく海を漂っていた。
  そのとき、偶然この町を見つけたのである。
  さっそく食料などを調達しようと、町の中を歩いて見て回っていると、、、。
  市場の少し離れた場所にあったマンホールから、妙な気配を感じたのだ。
  そして話は最初の会話に繋がる。


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  「ねぇ、フィス。この中から人の気配がしない?」

  「本当か?どれどれ・・・。うーん、確かに人の気配のようなものはするが、、、。
   こう暗くっちゃなぁ、、、。」

  「あ、そうか。   ・・・ライトニング!」


   あたしの光の魔法で、マンホールの中がパァ〜っと明るくなる。
   すると、その中の奥の方で、何やら動くものが見えた。


  「あ!やっぱり何かいるよ!」

  「よし、とにかく行ってみようぜ。」


    パタパタパタパタ


  あたしたちはとりあえず、マンホールの中に入っていった。


  ん?んんん???


  「お!男の子だ!う〜ん、結構カッコいいかも!」


  なんと、こんなところに男の子がいたのだ!
  着ているものは黒で統一してあって、バンダナなんてまいちゃって、、、なんかまるでどっかのスパイだな。。。

  あれ?でもこの人、手錠をかけられてる。
  こんなところにいるのと何か関係があるのかな?

  まっ、まさか、なんかの極悪犯罪者!?それでこんなところに捕まっているのかな!?
  え〜!もしそうだったらどうしよう!


  なんて、あたしが一人でパニックになっていると。。。


  「ぉぃ、、、、。」


  男の方もあたしたちに気づいたようだ。


  「おっ、しゃべったぞ。」


  フィス、そんなに近づくと危ないよ・・・。


  でもこの人、もう死ぬ寸前、ってくらい弱ってるわね、、、。
  手錠かけられているもんね。もしかして、ここ最近何も食べていないのかなぁ。

  あたしがまた一人で考えていると、男が喋りだした。


  「・・・おい、、、そこの兄ちゃん、、、。頼む、、、これを外してくれねぇか?
   お礼なら、いつかかならず、、、。」


  いきなりそう言われて、フィスはちょっと困った顔をしてこっちを見た。


  「だってさ、、どうする?アク?」


  いや、どうする、って言われても、、、。


  「アク、この手錠の鍵、外せるか?」

  「え、、、。あ、でも、、、。」

  「やってみてくれ。」

  「あ、、、う、うん、、、。」


   あたしはフィスに一方的に言われて、考えがまとまらないまま、鍵を外そうと男に近づいた。
  そしたら、この男、、いきなり、、、。


   「なんだぁ!おんなぁ!!!近づくんじゃねぇ!!!
  俺はこっちの兄ちゃんに言ってんだ!!!
  足手まといにしかなんねぇ女はすっこんでろ!!!」



  ・・・って・・・・。




  ・・・・・・・。




  ふ〜ん、、、そう、、、。そういうヤツね・・・・。




  ドカッ! バキっ!! ドゴッ!!!




  「う・・・・。」

  「あぁ〜ら、足手まといにしかならない「女」の攻撃をよけて下さらなくて、ほんっっっとうにありがとう!!」


  「お、おい、アクやめろって!」

  「離してよ、フィス!この男女平等の時代に、この女性差別発言!!ゆるせない!!!いや!ゆるしちゃいけない!!!」


  フィスが止めに入ったが、あたしの怒りはおさまらない!
  もう、ほんと頭来たんだから!なによ!初対面の人に向かって、失礼もいいところじゃない!
  せっかく助けてあげようとしたのにぃー!

  「だ、だけど、こんなに弱ってるヤツに、そんなするどい蹴りを入れなくてもいいだろう、、、。」


   ・・・・・・。


  「そ、そうね、、、。ちょっとやりすぎたかな、、、。ヒール・トラミン!」


  ちょっと悔しいけど、今のは大人気ないよね。。。
  仕方なく!回復してあげるわよ。


  「・・・おまえ、何者だ?」

  ふむ、すっかり体力回復したみたいね。男はあたしの力に驚いたようで、そう言ってきた。

  「あたしは魔導士・・・。」

  「・・・魔導士・・・って、、、。お前、魔法が使えるのか!?」

  「・・・・・・・・・・そうよ・・・・。」


  なによ、その顔。あ、わかった。魔導士だからって、おっかねぇ〜、とか思ってるんでしょ。
  これだから*フート(*魔法を使えない人:ちなみにこの世界はフートがほとんど。魔導士の方が珍しい。)は。。。


  「ふん、あいつにもそんな力があったらな・・・。」


  「?」

  「とにかく、さっきは悪かった。こんな暗いところにいるとな。昔のことを思い出しちまうもんなんだよ。」

  「過去になにかあったの?」

  「おめぇらには関係ねぇことだよ。」

  「あ、そう。」


  「・・・で、アク。鍵は外せるのか?」


  おっ?フィス、さっきからしゃべらないと思ったら、いきなり話を元に戻したわね。


  「頼む、これを外してくれ!」


  ったく。さっきは流れで外しちゃうところだったけど、あたしはまだこの人のこと信用してないんだった!
  なのに、なんであたしがそんなこと・・・。


  「アク、外してやろうよ。」

  「え?」


  フィスはあたしの心を読み透かしたように、言ってきた。


  「でも、フィス・・・。」

  「だって、おまえ、こんなところに一人でいたら嫌だろ?」


  ズキ、、、。一人・・・。


  「それに、こいつ、何も食べてないみたいだぞ!
   何も食べれないって、ぜってぇ嫌だろ!???」


  ・・・あー、フィスはそっちの方なのね、、、。


  「・・・わかった、、、。外してあげる・・・。」

  「よし!それでこそアクだ!」


  はいはい、、、。んじゃ。


  「キー・ブレイク!」


  カッキーン!!!


  う〜ん、いい音。これで鍵は外れ・・・・。


  てない!!???


  どういうこと!?


  「「おい、どうしたんだよ。」」


  、、、そんな二人でハモらないでよ。。。こっちが聞きたい!

  とにかくもう一回。。。


  「キー・ブレイク!!!」


  カッキーン!!!


  さっきと同じ音。。。

  だけど、、、やっぱり外れない!


  「アク、もしかしてダメなのか・・・?」フィスが聞いてくる。

  「うーん。」

  「なんだよ、期待だけ持たせといて無理なのか?」と、男。

  「うーん。。。」

  「一体どうなってんだよ。」と、また男。

  「うーん。。。。。。」

  「おい!なんとか言ったらどうなんだ!!!」


   ムカっ!!!


  「うっさいわね!!さっきから「うーん」って言ってたじゃない!!!
  まあ、それはいいとして、こっちは考えてんのよ!!
  だいたいあんたの為にやったり考えたりしてるんでしょ!!!ちょっと黙っててよ!!!」



  ハァ、ハァ、、ハァ、、、。


  「ア、アク、おちつけって・・・。」

  「う、うん、、、ごめんフィス、、、。
   とにかく、ちょっと調べてみるから、その手錠よく見せて。」

  「へっ、見たきゃ勝手に見な。」


  ドガッ!!!



  「口の利き方には気をつけた方がいいわよ・・・。」

  「・・・・・・・・・・・・・・はい。」

  「おい、アク!壁なんか壊して、この中崩れたらどうするんだよ!」


  まったく冗談じゃない。そんじょそこらの男に、あたしの力を否定されちゃたまったもんじゃないわ。
  でも、この鍵、どうして外れないのかしらね〜。うーん。。。


  「あ!!!」


  「ぎゃ!いきなり大声出すな!!」

  「あー、ごめーん。」


  この男、手錠を見せるために、あたしのすぐ近くにいたから、今の大声にちょっと耳を傷めたようだ。
  (フッ、いい気味。)


  「んで、アク、どうしたんだ?」

  「これ、プロテクトの魔法がかけられてる。」


  「プロテクト」の魔法というのは、一種の封印魔法である。
  早い話が、この魔法がかけてある鍵は「キー・ブレイク」のような、「普通の鍵」を開ける魔法では外れないということ。
  更に都合の悪いことに、この魔法はかけた人じゃないと、解除できないのだ。


  「ほう、見ただけでんなことがわかるのか。」

  「ムッ、バカにしないでよ!それくらい分かるくらいの能力は持ち合わせてます!!」

  「わっ、、、分かったから、、、大声で、叫ばないでくれ・・・。み、耳が・・・・。」


  「じゃあ、どうすればいいんだ?」と、フィス。

  「え〜と、プロテクトをかけた本人が解除魔法をかけるか、魔法の効力が切れるのを待つか。
   といっても、凄腕の魔導士がかけたのなら、少なくとも1年は切れないと思うけど。。。
   あとは、、、この手錠を壊すか。。。」

  「なに?この手錠、壊すことができるのか?だったら初めからそうすればいいじゃんか!」と、男が喚いてきたが。。。


  フッ、ド素人め。


  「あのね。この手錠、鎖の部分がなくて、両方の手がくっついちゃってるでしょ?」
  (そう、この男がしてるのは、8の字を横にしたような手錠で、その間に鍵穴があり、更にプロテクトの魔法がかかっているというわけなのだ。)

  「その場合、これを壊そうとすると、腕まで一緒に吹き飛んじゃうけど、いいかな(笑)?」


    サーーーーーーーーーーー・・・・・・。


  おーおー、青ざめてるよ。


  「でも、プロテクトの魔法をかけられて、こんなところに放り込まれるなんて、あんた、そうとう酷いことしたのね。」

  「む!?おい!俺は何にもしちゃいねぇぞ!」

  「?じゃあ、なんでこんなところにいるんだよ?」

  「・・・濡れ衣を着せられたんだ・・・。」


  「「濡れ衣!?」」


  「ああ、なんか最近、ここら辺で殺人事件が起こってるらしくって、、、。
   オレはそいつと間違えられたんだ。それで昨日、ここに入れられた。」

  「入れられた、って、誰に?」あたしは聞いてみた。

  「手錠を持ってるんだ、*ガーディアン(*警察のこと)だろ?」男はそっけなく言う。

  「ふ〜ん。」


   あたしは頷いた。


  「あ、さっき市場で言ってたな。夜になると拳銃を持ったやつが現れるって。」


  フィスが思い出したように言う。

  そういえば、そんなこと言ってたなぁ。そいつは確か、、、。


  「確か、、殺した人数は合計5人になるって、、、。」あたしも思い出した。

  「立派な刑務所行きじゃないか!!!」


  うん、フィスの言う通りだ。
  この男は誰が何と言おうと悪人だ。

  「だからそれはオレじゃねぇって!!!
   確かにオレは拳銃を武器としているし、だけどこれはモンスターたちと戦うために持ってるだけで!
   本当にオレじゃねぇんだ!信じてくれ!!!」


  ・・・「信じてくれ!」なんて言われてもねぇ。


  このガラの悪さ。しかも拳銃まで持ってるんじゃねぇ。。。
  そりゃガーディアンもプロテクトの魔法をかけたくなるわな。


  なのに、、、フィスったら・・・。


  「へぇ、お前銃使うのか!そりゃすげえな!あれカッコいいよなぁ!
   なぁなぁ、腕はどのくらいたつんだ?」


  なんて言ってる・・・。まったくこの能天気さと言ったら。。。


  「そんなのオレがここから出たらいくらでも見せてやるさ!」

  「おお!見てみたいな〜。」


  ・・・ちょっと待て・・・。今の誘導尋問じゃぁ、、、。もしこいつがホンモノだったら・・・。


  「待った!待った!!」

  「なんだ、アク。」

  「フィス!もうちょっと考えて行動して!こいつが本当に無実かどうか、まだ分かってないわ!
   もしかしたら、そんなこと言って抜け出した途端、あたしたちを殺そうとするかもしれない。。。」

  「んだと!この女ぁ!!!」

  「まったく、「女」、「女」ってうるさいわね。あたしにはアクって名前があるの。
   フィスがさっきからそう呼んでるでしょ。ちゃんと聞きなさいよ。」

  「けっ、お前の名前なんて興味ねぇや。」

  「あっそ。じゃあ別にいいわよ。
   とにかく、あたしはおいてけぼりにしようなんて言ってるんじゃないの。
   あたしたちがその犯人を捕まえて、あんたの無実を証明してあげようって言ってるの。」

  「ほ、ほんとうか!?」

  「えぇ、それなら、あんたが本物か偽者かすぐに分かるし。
   プロテクトの魔法も解除してくれるだろうしね。・・・ガーディアンが、、、かな?」

  「おお!さっすがアク!」


  ・・・フィスもこのくらい考えてよ。


  「とにかく、夜に出てくるみたいだから、うまくいけば明日の朝には、、、ね。」

  「・・・遅くても3日だ。」

  男は急に神妙な顔をして言った。


  「3日?」


  「ああ、3日後にオレは処刑される。オレをここにぶち込んだガーディアンが言ってた。」

  「?・・・まあ、5人も殺しているってことになってるもんね。
   そりゃ問答無用で死刑だわ。」


  「・・・・・・・・。」


  あら?黙っちゃった。


  「わかった。それまでに、なんとかね。」

  「・・・・・・・・頼む。」


  ・・・・・・・・・。


  「・・・行こう、フィス。・・・・あ、そうだ、あんた名前は?」

  「・・・・・・・・・。」

  「ま、いいけどね。」




  「・・・・・・・・アク・・・・・か。」





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