プロローグ

      昔々の物語


    時はXXX年、この世はまだ動物たちの方が数多く住んでいました。
   その動物たちは、特殊な力を持っており、炎や氷の石を吹き出したり、体の大きさを自由に変えられたりしました。
   そしてそんな動物たちは人間を見ると襲いかかり、人間たちの住処を荒らしました。
   人間は、それらの動物たちを「モンスター」と呼び、恐れおののき、動物たちに見つからないように細々と暮らしていたのです。

   そんなとき、ある特殊な力を持った人間が現れました。
   なんとそれは、モンスターたちが持っている力とまったく同じ力でした。

   その力は「魔法」と呼ばれ、その力を持った人間は、その力と持ち前の知能でモンスターたちと対等に闘うことが出来ました。
   しかし、それを使えるのは、ごくわずかな人間だけ。
   そのため、その力を使えないものはそれを不思議そうに見ているしかありませんでした。

   こうして、人間たちは徐徐に自分たちの住処を広げていったのです。


   力を持った人間が、力のない人間を守る。
   そこには確かに信頼関係があり、力のない人間たちはその力に驚くことはあっても、恐がることはなかったのです。


   そしていつしか、力を持った人間は「魔導師」と呼ばれ、力のない人間は「フート」と呼ばれるようになり、
   それから何百年と月日は流れ、今度はモンスターたちの方が住処を追われ、ついには人間たちの方が恐れられるようになりました。


   そんなある日、一人のフートの青年が旅の途中、森の奥にたたずむ一件の家を見つけました。
   好奇心の強かったその青年は、その家の扉をたたきました。
   すると、中からとても美しい女性が出てきました。

   青年は女性のあまりの美しさに言葉を失いましたが、家の中を見た瞬間、更に言葉を失ったのです。

   そこには、今まで自分たちを苦しめてきた、モンスターたちがその家の中にいたからです。

   「そ、、、そいつらは、モンスターじゃないのか、、、?」
   青年が聞くと、女性はさも当然と言った顔で「ええ、そうよ。」と答えました。

   「き、、、君はいったい・・・。」
   青年が恐る恐る彼女に問うと、彼女は、意味ありげな笑顔で、

   「私は、魔導師。」

   と、言いました。

   それを聞いた青年は、その場から一目散に駆け出し、自分の村に戻ってこう言ったのです。

  「魔導師はみんなモンスターだ!
   俺はこの目で見た!モンスターと一緒に住んでいる魔導師を!
   きっとそいつらは、人間の味方のふりをして、いつか俺たちを喰ってしまうつもりだ!」

   それを聞いた村人は、馬鹿なことを言うな!と相手にはしませんでしたが、
   悪い噂というものは、ものすごいスピードで広まります。

   そもそも「魔法」などという得体の知れない物を信じてもいいものか。
   魔法を使うものが自分たちの味方だという保証はどこにあるのか。

   その力を使えないフートたちは、日頃から感じていた羨ましさも手伝って、
   何時の日か、信頼は疑いへと変わっていったのでした。

   それからというもの、干ばつが続いたり、大きな嵐が来たりすると、
   魔導師が魔法を使って何かをしようとしているのではないか、という声も聞こえてくるようになりました。



   それから、また何百年と経ち、更にモンスターと闘う必要がなくなったフートたちは、改めて魔導師たちの力を恐れるようになりました。

   このままでは、私たちは魔導師たちの奴隷になるのではないか。
   そんな考えを持つものが多くなり、そしてついに、村から魔導師たちを追い出そうとしました。

   これに怒った魔導師たちは、魔法の力を持ってフートたちと闘いました。
   しかし、フートも考え無しで追い出そうとしたわけではありません。
   この何百年かで、培ってきた科学の力を持って、魔導師たちと互角に闘ったのです。

   その結果、数で負けていた魔導師たちはついに村からは追い出されてしまいました。

   こうして、フートたちは永遠の安息を手に入れたのです。


   そして、その魔導師たちがどこへ行ったのかは、誰も知ることはありませんでした。




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