海の中で


「船は進むよ〜♪ ど〜こま〜でも〜♪♪
なぁ〜んでも かぁ〜んでも か〜ぜまっかせぇ〜〜〜♪♪♪」

「・・・ザサ・・・、何なの・・・その歌・・・。」







BATTLE3 海の中に






   さて、前回よりあたしたちは、ザサと行動を共にするようになり、
  現在はザサと出会った町から、東へと次の町へ行こうと出発したんだけど。
  次の町は森を抜けて、海を渡った先にあるの。

  だからボートを借りて、今海を渡っている最中なんだけど・・・。

  大切なことを忘れていたのよ!

  食料を買い忘れちゃったの!

  まあ、前回いろいろあったからね、、、。
  でも、それで納得するわけがない人があたしたちの中にいる。。。



  そう、フィスである、、、。



  「食料を買い忘れたーーー!!!


  やはり一番最初に気づいたフィスは、そりゃもう、この世の終わりといった顔をして、その場にへたりこんだ・・・。


  「ま、まあ、フィス。次の町に行ったら、ちゃんと食料を買うから、もうちょっとガマンして・・・。」


  と、あたしは声をかけたけれど、ダメだ・・・。
  フィスったら、放心状態で聞いちゃいない。。。

  「ねぇ、ザサ、何か食べ物持ってない?」

  見るに見かねたあたしたは、ザサに聞いた。

  「いや、オレもそういうことを考えずに来ちまったからなぁ。
   そっか、もうお昼時かぁ。」

  うー。ザサも持ってないみたいだし、、、しょうがないよね。。。

  「フィス、ごめんね。」
  「うっうっう、、、。」

  あーもう、だめだこりゃ。


  と、思ったそのとき。


    ゴンッ!


  「おい、フィス、魚釣ろうぜ!!」

  ザサがどこからか釣竿を出して、それでフィスの頭をこづいた。

  おお!ザサ、気が利くじゃん!

  「フィス!これで昼ごはん、食べられるよ!」

  あたしがそう言うと、フィスったら、パッと顔を輝かせて、ザサに飛びついてった。

  「やったー! ザサ大好きーーー!!」

  「へへ、なんのなんの。」

  よかった、フィス、元気出たみたい。




  こうして釣りを始めたあたしたち。




  だが・・・。




  うーん、なかなかかからない・・・。




  あー、なんか退屈・・・。
  魚って意外に頭いいのね。

  退屈なのはあたしだけじゃなかったみたいで、ザサもときおり、カクンと前に倒れてた。
  どうやら眠くなってるらしい。

  そんな中で、目を血走らせて釣りに熱中しているのはフィス。
  むんむんむんむん、とやる気がこっちにも伝わってくる。。。


  うーん、それでもやっぱり退屈だわー。。。


  「ねぇ、フィス、釣れる?」

  あたしはフィスの方に行ってみた。

  「・・・・・。」

  だけどフィスからは返事がない。

  ・・・それだけ真剣なのね・・・。


  あたしはフィスの横に座って、海を見た。


  日差しはポカポカ。
  真っ白な雲がふわふわと空に浮いていて、あたりは水平線以外なんにも見えない。

  耳に入ってくるのは、時折鳴く鳥の声と、波の音。 ザザ〜っとね。


  はぁ〜、こう何もなにっていうのは、結構心を落ち着かせるわねぇ〜。


  あたしは気分が良くなって、ちょっとウトウトしてきた。


  このままこうしてるのも、結構気持ちいい―――――と思ってたところに!



  その場に合わない、突拍子もない声が!!!(怒)



  「ふぅ〜ねはす〜すむぅ〜よ〜♪ ど〜こま〜でぇ〜も〜〜〜♪♪
  な〜んでも かぁ〜んでも かぁ〜ぜまぁ〜っかせぇ〜♪♪♪
  チャチャチャチャチャン♪ ア・ソ〜レ!」




  「・・・・・ザサ・・・何なの? その歌・・・。」

  「へへへ、いいだろ? こう何もすることがないと退屈だからなぁ〜。
   オレ様の天才的な想像力と表現力で創ったんだぜぃ!」


  「って、適当に作ったんでしょ!!」


  まったく、人がせっかくいい気分だったのに、台無し!


  「なんだとてめぇ〜。オレ様の歌にケチつける気か!?」

  「どうでもいいけど、そんなバカでかい声で歌ったら、昼食が逃げちゃうわよ!」

  「オレの歌は聞けねぇってのか!?」

  「なによ!」


  「おい!二人とも黙っててくれ!」


  フィスが声を上げた。


  あたしたちはハッしてフィスの方を見た。


  しかし、そこであたしたちが見たものは、フィスの釣竿から離れていく魚だった。


  「あっあっ〜! 俺のごはん〜!

   見ろ! 今せっかくかかっていたのに、逃げちまったじゃねぇか!!!」


  フィスが涙目でうったえる。


  ご、、ごめん、フィス〜。 くそー、これもザサが歌なんか歌わなけりゃ・・・。

  「あっ、おいてめぇ。なにオレ一人のせいにしてんだよ!
   おめぇだって大声で怒鳴ってたじゃねぇか。おめぇの方がよっぽどうるさかったって!」

  「ちょっとザサ! 心の声に反応しないでよ! 話がややこしくなる。」

  「なにわけわかんねぇこと言ってんだ! おめぇは!」

  「あんたの方だって!」



  「いいかげんにしろーーーーーー!!!!!!!」


    キィィィィィィィン


  サ―――――――――




  う、、、うう・・・。

  フィスがおもいっきり大声を出したんで、耳が痛くなった・・・。


  「お前らがけんかするせいで、魚が一匹もかからないじゃないか!
  魚が取れないってことは、今日の昼飯がなくなるってことなんだぞ!
  わかってんのか! もっと危機感感じろよ!」




  ・・・フィス・・・こわい・・・。

  まあ、しょうがないか、、、。
  フィスは食べること大好きだもんね・・・。

  昼食がなくなるのは、フィスにとってそりゃもう大事件なんだろう。


  「フィス、ごめん。」
  「わるかった。」

  あたしとザサはフィスにあやまった。


  「・・・わかればいいんだ。 もうけんかすんなよ。
   とっとと昼飯釣ろうぜ。」


  と、また3人で釣りを始めて、かれこれ1時間・・・。

  「釣れないねぇ〜。」

  あたしはため息交じりに言った。


  うーん、、、もう疲れてきちゃった・・・。

  それに魚の気配もあまりしなくなっちゃったし。。。



  「やっぱりおまえらがけんかしたせだぞ・・・。」


  フィスが半泣き状態で訴える・・・。

  そんなに食べられないのが悲しいのか・・・。



  しかし、そんなフィスに残酷な言葉を投げつける者が・・・。



  「いや、オレが思うにフィスのさっき出した、バカでけぇ声で魚が逃げちゃったんだと思うんだが?」



  ザサはきっぱりと言った。


  そういえば、あのときから魚の気配がなくなったような。

  「サ―――」って。


  「・・・・・あたしもそう思うのだが。」


  あたしとザサはフィスを見る。


  ・・・フィスは固まっている・・・。






  「なにぃ〜!!!」









  ・・・やっと我に返ったようだ。





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